「まあとにかく、俺はおまえだからこうして来てみたって話。もしおまえがいちばんっていうことばに殺されてたら、助けてない」
「殺されてたら?」
「いちばんってことばを頼りに生きてんだもんな、おまえ。ヒカワユラより大丈夫だから、痛みをわかれないから、死ぬ資格もない。みたいな。いまはわたしがいちばん辛い、死んでやろう、って考えてたらどう救っていいかわからなくて放置してた。絶対にそうだ」
つまり楡は、悪魔界で見ていたことから考えて言っているらしい。過呼吸、不眠症、わたしは大丈夫。──大丈夫なのかよ、って。
「……確かに、わたしは、自分はいちばん辛いわけでもないし死んじゃだめだ、もっと辛いひとが、って思ってたけど──それに生かされてるのに、いちばんはひとりじゃないの?」
「おー。じゃあ逆におまえ、最下位は何人だと思ってんだよ」
「え、……え?」
せかいを逆さまにされたみたいだった。それでも地から足は離れなくて。地球が丸くてよかったなって、宇宙にあるものでよかったなって、本気で思ってしまった。最下位は、何人?
「最下位もひとりなはずだろ。でもそうじゃなかった。だって生きてるもんな。生きてるひとはたくさんいるから、だ。自殺したヒカワユラがいちばんで、それ以外は決めてなかった。俺から言わせりゃ、おまえにはひとりのいちばんと同率の最下位しかいなかったんだよ。いちばんしか見てないから気づかなかったの」
「え、どういう……」
「自分でもわかんねえ? まあいいけどさ。俺はおまえをいちばん救わねえとなんねえなって思って来た。でも俺の中で、俺自身もいちばんなんだよ。俺は俺のエゴで、俺の罪悪感と悪魔やめたいってだけの気持ちで助けに来たんだ。な、いちばんっていっぱいいるだろ」
少し考えた。わからない。楡と目を合わせながら、瞬きの増えたのを自覚した。
楡は、片方の口角を持ち上げてわらう。その顔は、記憶にないかもしれない。


