「どういうこと?」
「おまえがくるしいって思ったら、それはいちばんくるしいんだよ」
「……え? でもわたし、まだ全然、──だってゆらちゃんに比べたら」
「比べたらってなんだ、言っちまえばそれ迷惑だと思わん? 勝手に比べられて勝手に哀れまれんだ。そんな気ぃないかもしれんけどさ、向こうだっておまえのこと思ってると思わん? 」
いちばん。いちばん? 突然のいちばんがどうという話にうろたえてしまって、思考が回らなくなる。何もかもオウム返しの状態だ。
「向こう?」
「ヒカワユラだよ」
「っ……楡、全部教えて」
「あー……だめだな。やっぱ俺、悪魔向いてないんだわ。いじわるく言ってやろうと思っても結局教えるんだ、よかったな。楡くんが優しいやつで」
「うん」
「うんって言うなや。素直なこそきつい。……まあ話してくわ。高良は相手のことをいちばんくるしんでる人間として認識してたかもしれんけど、相手からしたいちばんは高良だとしてさ。そうなったとき、せかい基準ではだれがいちばんだと思う。測れんよな、測れるとしたらそれは革命じゃんか。多数決でなんでもかんでも決まるような世の中になりつつあるんだから、争いはほとんど消えるだろうな。個人の主観で思ってたことが、せかいという主観から定まるんだから。でも実際にはそうもうまくいかんの。せかいって主観からはっきりどっちって決まるなら、せかいっていうひとりの人格があるようなもん。じゃあどうっつったら、どっちもいちばん、って言やあ楽じゃん? そうなんだよ。どっちもでいい。たとえば片方が極悪人で、もう片方が神様も泣くくらい善人だとしても、どっちでも、どうでも。どう言われたって、だれかひとりからでも思われてる事実がある時点でいちばんを勝手に定めたらまずいと思わん? いちばんを決めたその人間の中のいちばんが、完全に殺されることもあるんだわ。他のだれかのいちばんだからって理由で。だったら逆に、俺はいま否定されたけど、おまえをいちばんに思ってるんだからそれもいちばんだろってなるわけよ。──言ってて意味わからんけど、高良わかってる?」
「ううん」
少しも間隔をあけずに言った。楡は、だよな、と淡々と言う。


