「母に、書いてたつもりだった。けど結局、なんかうまくいかなくてせかいあて」
「またずいぶんと大規模なことで」
「うん。それでも読む?」
「おー」
差し出された手に、預ける。楡はルーズリーフ、とわらった。このわらいかたは記憶にあって、本物の記憶かもわからないのに安心した。
ブルーベリーソースもチーズケーキも、不思議に思うくらい美味しかった。
ゆらちゃんも、来てみればよかったんだよ。それともひとりで来ていたのかな。
「なあ」
ゆっくりゆっくりと食べていき、最後のひとくちを飲み込んだタイミングで楡が口を開いた。見てたのかな。待ってたのかな。それはちょっと恥ずかしい、なんて、たぶん緊張してる。何言われるかなって。これを読んでどう思われたのかなって。なんにもまとまっていないはずの遺書だ。
あんなに短く書き終わったのに、わたし自身、何を書いたのかあまり覚えていない。
でも、それほどには、自分の意識しない根底にあるもののあまりふれたくないと素通りしてきた適当で連ねたんだろう。
「おまえ、いちばんになれるのがひとりだけとか思ってねえよな?」
「え? いちばんって、……いちばんって、ひとりだけだからいちばんじゃないの。同率1位とかはもちろんあるけど、ひとりだけがなる確率のほうが高いから」
「あーうるさいうるさい。高良は理屈言いすぎなんだよな。俺は、いちばんはひとりじゃないと思ってるから、教えとく」
聞かれたから、思う限りで答えようとした。それをそんなにはっきりうるさいと言われるとは思っていなくて、けれど、大袈裟なほどにわざとらしく早口で続けられたうるさいは、セリフめいたことを言うのが得意な楡らしかった。


