「用があって呼んだんでしょ。わざわざこの公園に、なんてさ。トラウマの場所かと思ったのに」
「……トラウマってほどはひどくない」
「ほんとかなあ」
んで、何? 上体を起こしながら首をひねり、茶髪をふわふわと動かしながら聞く。その、飄々としていそうでこちらの奥底にふれようとする、決して探っては来ない楡らしさ。
これも全部、作られた記憶なのかもしれない。
楡がスイーツ好きで、よく誘ってきた、というのも、洗脳なのかもしれない。どこからどこまでがほんとうなのか、聞けないままだった。そうして一生聞かないのだろう。
「遺書、書いたよ」
「だれあて?」
「母……の、つもりだった」
「おー、そりゃ大事だな。俺もかーちゃんとおまえにはいつか書こうって思う」
「そうなの?」
「ん。おまえには、いろいろ振り回されすぎてるし。俺も振り回しまくってるし。んで、かーちゃんには親不孝ものでごめんなって感じの。追放されにいくし。──でもたぶん、同じ墓には入れるだろうなとか勝手に思ってる。大好きなひとなんでね、まじで勝手に思ってる」
「……ごめ、」
「黙って」
謝ろうと口を開いたら、すごい勢いでてのひらが押し付けられた。いま、スプーン咥えてたら危なかったんですけど。──いや、咥えてないから開いたけどさあ。
なんて言おうかと思ったのも、一瞬。そう言いやすくしてくれたのは楡だったけれど、なんとなく、補導された通りに軽口をたたきにいくのはなんだかちがう気がした。


