『ていうか、これでよかったんだ。むしろ嬉しい。俺は悪魔やめたかったようなやつだよ、だから、いい』
悪魔のときの記憶は、誇り高き悪魔だったのに人間にまで落ちたって意識のために残されるんだと。と、楡がわらう。わらっているけれど、わたしはそれどころじゃなかった。
追放。追放? それって、死を意味するんじゃ。死って、ていうか、余命が縮まるって。スマホを取り出して73の2乗を計算し、思わずぞっとした。それだけの命を投げ出せる覚悟のあった楡に、鳥肌が止まらなくなった。
『このクレープは、ヒカワユラが行きたがってたとこ。麦ちゃんと食べてねってさ』
『……ゆらちゃん、賛成だったの?』
『んや、くわしくは言ってない。ここには連れてこない、俺は人間界で仕事があるからやってくる、おまえとはもう会うこともできないだろうけどがんばってくるわー、つって』
殴られたような衝撃だった。というか、実際に殴ってくれていたほうがよっぽど柔らかい痛みだったんだと思う。
わたしが、楡の余命を短くした?
言われたあの日から、もう1週間も経つ。それなのに、思考はずっと同じところで止まったまま。
「高良、たからー。あてられてる」
「っあ、はい!」
すっかり習慣になっている、真面目に授業を受ける、ということはできていたはずだった。移動教室もしっかり遅刻せず、ノートもしっかり取って。普段先生からあてられることなんて少ないから、うまく対応できなかった。
楡が言ってくれなかったら、先生がだれかを指名している、ということと自分があてられている、ということが繋がらないままだっただろう。
大きく息を吸い、それならなんでもなかったかのように淡々と答えを口にしていく。
先生の素晴らしい、と褒める声。
耳を塞ぎたくなった。


