煌めくせかいでいちばんめ、




『たまにおまえはゆらちゃん、って言うし。あれ無意識だったろうけど、ちいさなつぶやきでも聞こえるんだよなあ。で、ボロボロになってるおまえとヒカワユラを見ながら、こいつは絶対悪魔界には連れてこないって宣言した』

『……え、なんで? できるの? そんなこと』

『できないけどいましてる』

『え?』



麦ちゃんはきっと抱え込んじゃう、わたしのせいだ、って泣いてたんだよ。偽善じゃなく本気で。普通に無視できんだろ。



『俺、いいやつだからさ。言うの2回目だけど』

『……うん』

『いま自分で言うかって思っただろ。思っただろうけど、いいことじゃないんだわ。悪魔がいいやつでなんかいいことあるかっていうね』

『あ……』

『そ。そんなんだから、俺、悪魔やめたいわ罪悪感すごいわで、救われたかったんだ。それでありとあらゆる悪魔界のルールを破った』

『え?』

『あ、楡って名前はヒカワユラがつけたんだ。麦ちゃんから借りた楡木アコの本が面白かったー、って言うから』



まって、と大声で遮る。悪魔界のルールを破った。悪魔界のルールを破った?



『ルールとして決まってるってことは、破っちゃまずいんじゃないの』

『んー、悪魔界も暇じゃないから、俺みたいな偉くもない悪魔個人は監視してないし、すぐにはばれないと思うけど……ばれたら追放かな』

『追放!? ……どこに』

『人間界。悪魔は人間のことを下に見てるし、だから人間を連れて地獄に行ったり人間の魂を引きずったりできんだよ。だから追放先は人間界なの。寿命とかで見ても──そう、俺、ほんとの余命は楡って人間のときに言ったのの2乗くらいはあってさ』



追放されたら、余命は楡として隣にいたときと同じになる。何千年も縮まる。……でも、いいんだ。俺、高良と同じ時空で生きてみたかった。



『同じからだの重さを、抱えてさ』



楡はそう言って、いちど黙った。罪を告白するように、深くきつく呼吸する。わたしは、これから罪を犯すような心地で聞いていた。