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「高良。たーかーら!」
「……楡」
「そ、楡くんですよ。高良、うとうとしてたっしょ」
ふわふわと、ゆるくうねりながらも軽そうな茶髪が揺れる。わたしはじいと彼の目を見つめてから、はっとして立ち上がった。
「楡、いま何時」
「4時20分。くらい」
「楡が来るの、遅いから」
「俺のせい? 寝こけそうになってたのは高良だよ」
そうなんだけどそうとは言いたくないっていうか。ぶつぶつと文句になりきれないことばをつぶやきながら鞄を掴むと、楡は急げ急げと野次を飛ばした。うるさい。
「あと10年39日52分だそうで」
「楡のせいでまた無駄にして減った」
「はいはい、さーせんね」
ひと月くらい前だったと思う。楡が突然、なあ俺、悪魔と契約したかもしれん、なんて言い出したのは。