スプーンでクリームブリュレの上のほうを掬って、
「……っ、美味しい!」
美味しいね、と、勢いよくそちらを見て、
「美味しいね、ゆらちゃん」
同じように目を輝かせている彼女にわらいかけた。
「ゆらちゃん、穴場のお店見つけるの上手だか……ら……?」
風の柔い温度が頬を撫でていく。瞬きするたびに視線が落ちていって、スプーンを見つめることしかできなくなった。
もうひとくち、口にする。飲み込む。美味しい。風がぬるい。また食べる。美味しい。また風がぬるい。遠くでこどものはしゃぐ声がする。風はぬるいまま。楡が、うま、と言った。
「楡……?」
「いつもイケメン楡さんですよ」
「うん、──楡だ」
楡がいる。隣には楡がいる。当然だけど、ゆらちゃんはいない。楡が、いる。楡は、さっき、いなかった。なんだった? あれは、なんだったんだ。楡には聞こえていなかった? わたし、何も言っていなかった?
「楡って、だれなの……?」
気がついたら、思うままに口に出していた。


