「集合写真」



修学旅行で撮ったクラス写真なら、楡と隣でうつったはずだ。棚からアルバムを取り出そうとする。隣の本棚には、ゆらちゃんに貸したことのある本。



わたしがゆらちゃんに本を貸したのはいちどだけで、楡木アコの『祈り』というタイトルだった。ゆらちゃんの死を聞いてから、形見のように思えてきてしまって、あれ以来いちどもふれることができずにいる。



楡木──そうだ、楡のことを考えていたんだ。アルバムを手に取り、開く。……うん。いちばん端で、口角をあげた大人っぽい笑みをしている楡。



「っつ」



頭、痛い。あまりにも唐突で、驚きと痛みから声がもれた。片手をこめかみにあて、押さえるようにしながら反射で閉じていた目を開ける。



「……え?」



瞬きするまでのあいだだけ、頭痛も何もかもをわすれた。次の瞬きで何もかもを思い出して、痛みに再び呻くことになる。



それでも、それどころじゃいられなくなった。



「いる、か」



一瞬だけ、わたしの隣に楡がいなかった。さっきだけ、わたし、楡のことをわすれていた。あたりまえのように、片方の隣がいない写真を見つめていた。次の瞬間思い出して、慌てた。



「疲れすぎ……」



ルーズリーフとシャーペンは、適当に隅においやる。母が部屋に入ってきても、これならたぶん気がつかないだろう。しっかり読まない限りは遺書だとも思わないと思う。しっかり読んだところで、深読みしないと思えない。たぶん。何より、母はこういうものを勝手に見ないから。



その日は、溺れるみたいに眠った。



ひどくひさしぶりのことだった。