遺書を、書くことに決めた。




最初からお気に入りの便箋に書いたら、たくさん書き直すことになったときに悲しいし……と、ルーズリーフを取り出す。



今回の遺書は、楡に渡すためのもの。楡に何が書きたいかな。母にだったら、いろいろと書きたいことが浮かぶ気がするんだけど──、楡にあらたまって言いたいこと。



楡のせいじゃないよ。



いちばんに思ったことばはこれで、でも、これって。



「……長生き、しなきゃ、だめ……だよね」



シャーペンをくるりと回して、文章を考えていく。3行ほど埋まったあたりで、楡の顔が見たくなった。手紙にするのって、死を意識しながら書くのって、こんなに、こんなになんだ。



写真を取り出そうとして、そういえば、楡とふたりで撮ったことはないなあと思い出す。わたし、写真はそんなに好きじゃないし、うつりたくないし。頼んだら撮らせてくれそうだけど、楡だけをうつして撮るの、なんか変かなって。



普段から写真を撮り合うわけでもないのに、突然、自分はうつりたくないけど楡の写真はほしい、なんて。