連絡の来なかった1年間、どうして相談してくれないの、とこそは思わなかったけれど、わたしじゃちから不足なのか、とか、大丈夫かな、とか、勝手に心配していた。不安になっていた。



わたしもいざ相談したいことがあったら、重いと思うほどに言えなくて抱え込むのに。そうやって気がついたのは、毎晩トイレに篭って、便器を抱えて、吐けもしないのに空を見つめて、呼吸を見失っている最中だった。



ゆらちゃんが、ここまで苦しんでいなかったらいいなと思う。



でも反対に、苦しんでいてくれないと、いまのわたしのがんばりも捨てて飛び出したいと思ってしまう、そんなわがままも抱えてる。



楡は、ゆらちゃんのことを知らない。ゆらちゃんは中学のときの友達だから。──わたし、ほんとうはずっと、ゆらちゃんに憧れていた。



楡も少しだけ、ゆらちゃんに似ている気がする。



「お客さん、お客さーん。起きてますか、終点ですが」

「……起きてますよ」

「寝てるひとの声だよ、それ」



背中に押し付けていた頭をあげて、お疲れ様ですおにいさん、なんて言う。



「まじ疲れたわ」

「ありがとう」

「ほら、早く行くよ。何買うんだっけ?」

「ココア味のポップコーン!」



おつかいかよ、と楡がわらった。会話を思い出すとそんな感じだ。楡は心配性で思いやりの大きい優しい保護者役。



「高良、行くよってば」



駐輪場前で行き交うひとを前に、止まったままのわたしの手を楡が引く。



「……あ、ご、ごめん!」



手首を掴まれたそのまま、楡がどんどんどんどん進んで行くのにつれられて歩く。あっという間に館内のざわざわに紛れ込んで、ぱ、と手が離れた。



「買っといで。席は俺がとっとくから。後ろから2番目の中央でしょ?」

「うん、ありがと」

「はいはい」



さっき。


駐輪場の前を通ったあのひと、ゆらちゃんにちょっと似てたな、なんて。



「ゆらちゃんはひとりしかいないでしょ」



つぶやいたら、一瞬、ポップコーンなんてどうでもよくなりかけて。



困ってしまった。