仕事用の化粧をしながら、”お客様ノート”と題したノートを開き、ため息をついた。
今日は月曜日だから、そもそもお客様が少ない日。
週末はあまり稼げず、オーナーから怒られた。
私は、正直なところ、1ヶ月に20万円ほど稼げたらそれで十分。
この家のローンは叔母が両親の保険金で支払ったし、私自身、物欲があまりないからだ。
「今日のお客様は、……いつものあの人、か。」
いつものあの人、私の舌ピアスを指摘して、怒鳴ることで気持ちよくなるお客様のこと。
私は、それでもそのお客様を出禁にすることは絶対にしない。
親戚がこの家から出て行って以来、私に罰を下せるのは、舌ピアスを嫌うお客様だけだから。
私は、生涯、両親と兄への償いをしなければならない。
それほどの重罪を背負って生きていかなければならないことを、この20年で学んで理解したからだ。