親戚たちが病室を出てから、渡されたテレビカードを専用の差し込み口に入れた。
少し痛む腕に力を入れて、テレビの電源をつけると、そこには見覚えのある車がほぼ大破といっていい形で映し出されていた。
「………。」
アナウンサーがいとこと同じように、淡々と説明している。
難しい言葉が羅列していた。
「6月24日夕方、神奈川県の城ヶ島大橋上にて、大人の男女2名と子ども2名が死傷する大きな交通事故がありました。子ども1名は助かりましたが、残りの3名は即死だった模様です。」
悪夢を見ているんだ、これは悪夢だ。
早く覚めなきゃ。お父さんとお母さん、りゅう兄に会いたいー。
何度も何度も、頭を叩いたり、頬をつねったりしたのに、悪夢から逃げられない。
途中で様子を見に来た看護師に手を掴まれ、鎮静剤のようなものを打たれた。
そのときに見た、本物の夢の中で、またドライブをしていた。
両親、兄、私の全員がいて、笑っていた。
良かった。みんな、生きている。
安心したはずなのに、涙が止まらなかった。
退院してすぐ向かった先は、冠婚葬祭を行う小さなホール。
ホールには、これから一緒に住むと聞かされている親戚、たまにしか会えない親戚も全員揃っていた。
お葬式が始まる前、叔母の隣で、私の誕生日に家族みんなで行った城ヶ島やドライブでのことを話した。
叔母はどこか、遠くを見つめながらも、相槌を打って聞いてくれていた。
「城ヶ島でね、灯台があるところに行ったの!そこね、ママが言ってたんだけど、思い出の場所なんだって!だから、胡桃の誕生日に連れて行ってくれたんだって!」
私は、自分の中で両親も兄も生きていたから、お葬式なんて受け容れていなかった。
"遺体"と呼ばれるものが入った棺を目の前にしても、空っぽなんだと自分に思い込ませ、棺の扉を開けることはしなかった。
そのまま、叔母に誕生日のことを話していた。
気が緩んで、「本当はドライブに行きたかったんじゃなくて、私のために何かしてほしかっただけなんだ。」と叔母に告げた。
その途端、叔母の身体が震え出し、突然、私の左頬を叩いた。
「あんたが嘘ついて、おでかけしたいとか言ったからなの?ねぇ…何とか言いなさいよ!」
叔父がその怒鳴り声を聞いたのか、私と叔母のいるところまで駆け寄ってきて、叔母の背中をさすっていた。
叔母は息切れしながら、殺気立てた目で私を睨んでいた。
「胡桃なんて名前、こんな嘘つき人間には似合わない。あの2人、何も考えずにつけたのね。」
そう言われた瞬間、自分の中で何かが崩れ落ちた音がした。
それから、親戚と暮らし始めた。
ニュースでは大きな事故だったこともあってか、家の周りにマスコミが常に張り付き、滅多に外に出られないような状態が出来上がってしまっていた。
家中のカーテンが閉め切られ、私は2階の自分の部屋に閉じ込められた。
事故から半年も経つ頃には、事故前の日常が形を変えて戻りつつあった。
最初は優しかった叔父も、叔母に言いくるめられたのか、家に帰る頻度が減り、帰ってきても泥酔状態で介抱が必要になっていた。
叔母は私を虐待するようになった。
いとこは急な転校を余儀なくされたからか、転校してきた学校、つまりは私が通っているはずの小学校で酷いいじめに遭い、そのストレスを私に全てぶつけるようになった。
少し痛む腕に力を入れて、テレビの電源をつけると、そこには見覚えのある車がほぼ大破といっていい形で映し出されていた。
「………。」
アナウンサーがいとこと同じように、淡々と説明している。
難しい言葉が羅列していた。
「6月24日夕方、神奈川県の城ヶ島大橋上にて、大人の男女2名と子ども2名が死傷する大きな交通事故がありました。子ども1名は助かりましたが、残りの3名は即死だった模様です。」
悪夢を見ているんだ、これは悪夢だ。
早く覚めなきゃ。お父さんとお母さん、りゅう兄に会いたいー。
何度も何度も、頭を叩いたり、頬をつねったりしたのに、悪夢から逃げられない。
途中で様子を見に来た看護師に手を掴まれ、鎮静剤のようなものを打たれた。
そのときに見た、本物の夢の中で、またドライブをしていた。
両親、兄、私の全員がいて、笑っていた。
良かった。みんな、生きている。
安心したはずなのに、涙が止まらなかった。
退院してすぐ向かった先は、冠婚葬祭を行う小さなホール。
ホールには、これから一緒に住むと聞かされている親戚、たまにしか会えない親戚も全員揃っていた。
お葬式が始まる前、叔母の隣で、私の誕生日に家族みんなで行った城ヶ島やドライブでのことを話した。
叔母はどこか、遠くを見つめながらも、相槌を打って聞いてくれていた。
「城ヶ島でね、灯台があるところに行ったの!そこね、ママが言ってたんだけど、思い出の場所なんだって!だから、胡桃の誕生日に連れて行ってくれたんだって!」
私は、自分の中で両親も兄も生きていたから、お葬式なんて受け容れていなかった。
"遺体"と呼ばれるものが入った棺を目の前にしても、空っぽなんだと自分に思い込ませ、棺の扉を開けることはしなかった。
そのまま、叔母に誕生日のことを話していた。
気が緩んで、「本当はドライブに行きたかったんじゃなくて、私のために何かしてほしかっただけなんだ。」と叔母に告げた。
その途端、叔母の身体が震え出し、突然、私の左頬を叩いた。
「あんたが嘘ついて、おでかけしたいとか言ったからなの?ねぇ…何とか言いなさいよ!」
叔父がその怒鳴り声を聞いたのか、私と叔母のいるところまで駆け寄ってきて、叔母の背中をさすっていた。
叔母は息切れしながら、殺気立てた目で私を睨んでいた。
「胡桃なんて名前、こんな嘘つき人間には似合わない。あの2人、何も考えずにつけたのね。」
そう言われた瞬間、自分の中で何かが崩れ落ちた音がした。
それから、親戚と暮らし始めた。
ニュースでは大きな事故だったこともあってか、家の周りにマスコミが常に張り付き、滅多に外に出られないような状態が出来上がってしまっていた。
家中のカーテンが閉め切られ、私は2階の自分の部屋に閉じ込められた。
事故から半年も経つ頃には、事故前の日常が形を変えて戻りつつあった。
最初は優しかった叔父も、叔母に言いくるめられたのか、家に帰る頻度が減り、帰ってきても泥酔状態で介抱が必要になっていた。
叔母は私を虐待するようになった。
いとこは急な転校を余儀なくされたからか、転校してきた学校、つまりは私が通っているはずの小学校で酷いいじめに遭い、そのストレスを私に全てぶつけるようになった。