君の瞳は、全てを包み込むような、優しい色をしていた。
 その瞳から零れ落ちる一粒の涙を、僕の手で拭うことが出来たのならどんなによかっただろう。

 ーーなんて言ったら、君は怒るかもしれないね。泣いたことなんてない、と言って頬を膨らませるかも。いや、むしろ呆れるかもしれないなあ。
 様々な表情をする君の姿が想像でき、思わずふっと笑みを浮かべてしまう。


 大切だったんだ。
 君が。
 他の誰よりも。
 他人のーー僕の為なんかに怒って、泣いてくれるような君が。
 真っ直ぐで、明るく、無邪気な笑顔をむける裏に弱さを隠している、他人に対して強がってしまう君が。
 気丈に振る舞っているけれど、実は繊細で涙脆い君が。
 澄み渡った空のような綺麗な声で僕の名を呼ぶ君が。
 孤独で色褪せた僕の世界を彩ってくれた君が。
 いつのまにか特別な存在になっていた。
 大切で、大切で。
 どうしようもなく愛おしくて。

 ーー歌奏。
 君との出逢いが僕の人生を変えたんだ。
 勿論"良い方向"にね。 
 ありがとう。
 ありがとうを何度言っても足りない。
 感謝してもしきれない。
 だから、せめてもの恩返しとして僕は今日も歌い続けます。
 君が好きだと言ってくれたこの声を、君が存在していたこの世界に、君が彩ってくれたこの世界に、君が好きだとだと言ったこの世界に。
 昨日も、今日も、明日も、来年も、ずっと、ずっと後も。
 必ず、君のいるところまで響かせるから。

 
 だから、だから、どうかーーー。