出会って日の浅いお前に、何故僕はあんなことを言えたのか分からない。

 お前の言うとおり、僕の心は壊れていて、好きな人ができると壊したくなる。

 だから、誰も好きにならないように、死んだように生きてきたんだ。

 でも、もう手遅れかもしれない。

 加藤、僕はお前に会いたくて仕方がない。

 今まで他人に対してこんな感情を抱いたことは一度もなかった。

 会って、この感情とちゃんと向き合いたいんだ。

 たとえ、とりかえしのつかないことになったとしても。

 お前の居ない学校は、嫌なんだ。耐えられない。お前は僕に死ぬなと書いたけど今、この手紙を書いてる瞬間も死にたくなるくらい辛いんだ。

 近いうちに両親に頼んで、僕もお前の居る学校に転入させてもらえるように頼もうと思ってる。両親は反対するかもしれないけど、家出してでもお前に会いに行くつもりだ。

 加藤、僕と会って欲しい。

 その場で殺してくれてもいいから、会って欲しい。

 出来れば返事をくれ。

                                     緒方透


「緒方……」

 私は何度も緒方から来た手紙を読み返す。緒方が私に会いたがってる。そう思っただけで心の奥がじんわりと温かくなる。ああ良かった。まだ一人ここに居る。私と会いたいって思ってくれる人が世界に居てくれる。私は校庭で彼とケンカをした。彼と秘密を共有した。彼と冷やし中華を食べた。彼と笑って歩いた。彼を思って自慰をした。歪な私達だけど、言葉にするのも恥ずかしいけど、きっとあれが初恋というものなんだ。私にとっても、彼にとっても。ああ、あと数日長く彼と一緒にいられたら、きっと私は彼とキスしてセックスして、そして最後に、カマキリの雌が交尾しながら雄を捕食するように彼を殺したんだ。あるいは緒方に貫抜かれながら絞め殺されてたんだ。

 どっちでも、良かった。

 初恋の男の子と、一瞬でも心と身体を重ねられたのなら。

 こんな壊れた私でも、好きな異性に抱かれながら、嬉し泣きしたかったのに。

 あと少しでそれが叶ったのに。

「緒方、緒方ぁ……」