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 一時限目の終わりのチャイムが鳴るのと同時に、僕と加藤は教室に戻った。

 早速事件が起きていた。僕と加藤の机の上に、二人の弁当がぶちまけられた状態になっていたのだ。今までハブられていただけの僕が、加藤とセットになることにより、より明確なイジメの対象として格上げ(格下げ?)されたらしい。加藤が渡り廊下のところで、クラスメイト達を子供だと称して見下していた気持ちが当事者となった今の僕にはよく分かった。こんな程度の攻撃で、僕や加藤を傷つけられるわけないだろう。僕達を傷つけたければ、それこそ命がけで来てくれ。僕が加藤の首を絞めたように。加藤が僕の睾丸を蹴り潰そうとしたように。

 僕は周囲を見渡す。目が合った連中は皆、最初はニヤニヤしていたが、僕がずっと彼らの目を見つめ続けていると、やがて顔色を失いうつむいてしまう。

「緒方、目が怖いよ。まばたき忘れてない?」

 学校指定の鞄を肩に下げた加藤が、僕の真横に立ってそんなことを言った。

「お前、何で鞄持ってるんだ?」
「昼食こんなになったし、もう今日は帰る。おい、やったヤツ、ちゃんと片付けとけよ」

 加藤は汚れた机の足を軽く一蹴りすると、ふん、と鼻を鳴らした。

「お前のが怖いよ。スケバンかよ」
「緒方、古っ。和さんと話合うかも。そうだ、今から緒方もウチに来なよ。和さんと二人だけでご飯食べるのキツいから混ざってよ」
「あの人、優しそうだったけどな」
「優しいけど、ボケまくるからツッコむのがメンドーなんだよ。無視すると拗ねるし。うん、それがいい。そうして」