12
「ルールを決めようと思うんだ」
僕達しかいない保健室で、僕は加藤に背中の傷の手当を受けながら提案をした。加藤は手当と言いつつ、興奮気味に(鼻息すら聞こえた。)僕の剥き出しの肌を必要以上にペタペタ触っていた。もしかしたら舌で舐められていたかもだけど、あえてそこは不問とした。
「ルール?」
僕の背中にキズバンを貼り終わった加藤が、丸椅子に座っている僕の正面にやってきて小首を傾げた。僕は脱いだシャツに袖を通してから頷く。
「僕と加藤との接触についてのルール。ヒトデナシの僕達が平和的かつ建設的な関係を構築するためには必要だよ」
「友達関係ってことでよくない?」
「さっきも言ったけど、僕にとっては友達関係でも危険なんだ。お前を友達だと認識したら自制が効かなくなると思う」
「私もさっき言ったけど、他人は嫌」
「普通の人って、こんな時どうするんだろう?」
「したいようにするんじゃないかな。緒方はどうしたいの?」
「分からないけど」
「じゃあ、分かるまで考えて。それしかないよ」加藤に言われて、僕はしばらく僕と加藤の一番いい距離感を考えてみる。
「なら、友達未満、他人以上として接しよう」
僕は加藤と自分を守るために、ぎりぎりの折衷案を出した。お互い傷つけ合わず、孤独にもならないためには、それしかなかった。
「それって、私は緒方をいったいどう認識すればいいの?」
加藤は僕の出したアイデアが気に入らないのか、眉根を寄せて僕の顔をのぞきこんだ。顔がかなり近い。僕はがたんと、音を立てて丸椅子ごと後ろに下がりながら彼女から視線を外して答えた。「知人じゃないかな」
「知人って、何をどこまでやっていいの? 挨拶はしていいの?」
「それはいいだろう」
「教室でしゃべるのは?」
「いいんじゃないか?」
「一緒に帰るのは?」
「それはダメ。友達っぽい」
「メールやケータイで連絡するのは?」
「女の子が異性にメアドや携帯の番号教えるのって、彼氏クラスだろ? 絶対ダメ」
「何それ、今と全然変わんないじゃん」
加藤は両手で僕の頬を挟んで強制的に、僕の顔を自分の方へと向けさせる。
さっき以上の至近距離に、加藤の子供っぽいふくれっ面があった。
可愛いと思ってしまう。
美形はどんな表情をしても、魅力的でズルい。
「ルールを決めようと思うんだ」
僕達しかいない保健室で、僕は加藤に背中の傷の手当を受けながら提案をした。加藤は手当と言いつつ、興奮気味に(鼻息すら聞こえた。)僕の剥き出しの肌を必要以上にペタペタ触っていた。もしかしたら舌で舐められていたかもだけど、あえてそこは不問とした。
「ルール?」
僕の背中にキズバンを貼り終わった加藤が、丸椅子に座っている僕の正面にやってきて小首を傾げた。僕は脱いだシャツに袖を通してから頷く。
「僕と加藤との接触についてのルール。ヒトデナシの僕達が平和的かつ建設的な関係を構築するためには必要だよ」
「友達関係ってことでよくない?」
「さっきも言ったけど、僕にとっては友達関係でも危険なんだ。お前を友達だと認識したら自制が効かなくなると思う」
「私もさっき言ったけど、他人は嫌」
「普通の人って、こんな時どうするんだろう?」
「したいようにするんじゃないかな。緒方はどうしたいの?」
「分からないけど」
「じゃあ、分かるまで考えて。それしかないよ」加藤に言われて、僕はしばらく僕と加藤の一番いい距離感を考えてみる。
「なら、友達未満、他人以上として接しよう」
僕は加藤と自分を守るために、ぎりぎりの折衷案を出した。お互い傷つけ合わず、孤独にもならないためには、それしかなかった。
「それって、私は緒方をいったいどう認識すればいいの?」
加藤は僕の出したアイデアが気に入らないのか、眉根を寄せて僕の顔をのぞきこんだ。顔がかなり近い。僕はがたんと、音を立てて丸椅子ごと後ろに下がりながら彼女から視線を外して答えた。「知人じゃないかな」
「知人って、何をどこまでやっていいの? 挨拶はしていいの?」
「それはいいだろう」
「教室でしゃべるのは?」
「いいんじゃないか?」
「一緒に帰るのは?」
「それはダメ。友達っぽい」
「メールやケータイで連絡するのは?」
「女の子が異性にメアドや携帯の番号教えるのって、彼氏クラスだろ? 絶対ダメ」
「何それ、今と全然変わんないじゃん」
加藤は両手で僕の頬を挟んで強制的に、僕の顔を自分の方へと向けさせる。
さっき以上の至近距離に、加藤の子供っぽいふくれっ面があった。
可愛いと思ってしまう。
美形はどんな表情をしても、魅力的でズルい。