私は肺から熱気のこもったため息を吐きながら、キャリーバッグを引っ張りつつ和さんと柵を挟んで並んで歩く。プラットホームの黄色い点字スペースには私の濃い影が落ちている。ここは屋根すらない。ほとんど真上から直射日光に焼かれてしまう。私はつむじが焦げてしまうのではないかと心配しながら、肩を落としてプラットホームをたらたら歩く。前方には和さんの言うとおり、鉄柵がない幅一メートルくらいの箇所があった。私がそこを通り抜けて歩道の和さんと合流した瞬間、キャリーバッグの車輪が、がさっと乾いた音を立てた。壊れちゃったかマズいな、と思って私は屈んで下を見る。

 車輪が、黄色っぽくて半透明な長い何かを粉砕していた。長くて、鱗みたいなものがびっしりとついていて、超気持ち悪い。

「何これ……」私はその見たことがないキモいブツを観察しながら血の気が引いていくのを感じた。
「ヘビの抜け殻じゃない?」

 私の真横で、中腰になった和さんがあっけらかんとした声で言った。

「ヘビいるんですか? ここ?」
「たまにいるよ。車道で轢かれたヤツとか見るし。あ、ずっと前、庭に入ってきたこともあったかな。でも毒はないから平気だよ。山にいるのはヤバいかもだけど」

 和さんの言葉を上の空で聞きながら、私は思った。

 とんでもない田舎に来てしまった、と。