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 ナミトクに杏と転入をしたフリ(あたしは元々ここの生徒で、皆はそれを杏には隠すように命令してある。)をして三日経った。杏はここの何の役にも立たないつまらない授業と実習という名の強制労働に辟易しているようだった。その間、あたしは常に杏のそばにいて、彼女の挙動を監視していた。慣れない手つきでサバやダチョウ肉をさばく杏が傍から見てて面白い。予想通り、普段は調理なんかしないようなお嬢様生活だったのだろう。まあ、あたしも杏が来る前はやってなかったから似たようなものだけど。監視していて分かるのは、杏が少し痩せているというか、やつれだしたような感じがしたことだ。頬が少しこけているし、足下がおぼつかず何度か倒れそうになっていたから。無理もない。いつ籤に当たってセックスを強要されるか分からない恐怖の中で毎日暮らしているのだ。食事もいつも半分は残している。うーん、このままだとせっかくのキレイな子が醜くなってしまう。お父さんを含めた男の職員共も早く杏を犯したいとあたしをせっつくし。

 そろそろ一度目の宴を開催したい。

 だが、あの子は何故か一日二度の籤で、未だに当たったことがない。運のいいヤツ。

 どうせなら、キレイな内に一度いたぶりたい。あの子が男達に汚されて、心を折られ泣き叫ぶ声を聞きたい。あの子と同じ部屋で寝ている時、何度あの子の首を絞めたいという衝動に襲われたのか数え切れない。何度男達に嬲られるあの子の姿を想像して自慰をしたのか分からない。欲求不満がピークに達する。もう我慢できない。あたしは、真夜中に起き出すとそっと二段ベッドの下に降りて、杏が眠っている様子を見つめながら携帯電話を取りだした。

 ――何よ、こんな夜中に。

 柘植の声は不機嫌さを隠そうともしない。あたしは無視して話を続ける。

「明日の夜の籤は、全部、ハズレにして」

 ――え? どういうことよ。

「あなたは何も知らなくていいわ。じゃあお休み」

 あたしは柘植の返事も待たずに、電話を切った。微かな寝息を立てている少女を眺める。窓からの白い月明かりが、彼女の髪と肌を照らし、夜の闇色と混じり合い、杏を青白く染め上げていた。思わず息を飲んでしまう。嫉妬するほどキレイな子。この少女が二十四時間後には――。そう考えただけで、あたしの下半身が濡れてくる。

「杏、明日の夜だよ」