碧の電話で家族がみんな無事なことは分かった。でも部屋には大切な物がたくさんある。おじさんからもらったたくさんのお土産。

アルバムも。すべてが焼けて灰になるなんて耐えられない。

必死に走って家に戻ると、既に火は消し止められていた。

幸いボヤで済んだようだ。

火元は二階の洗面所のコンセントが怪しいということだった。

わたしの部屋の隣のはめ殺し窓が割られ、その付近が煤けているのが見えた。

「わたしの部屋、無事だよね」

洗面所を挟んで反対側にある碧の部屋は無事だったらしい。

階段も上がれる状態だと聞いて、わたしは家の中に飛び込んでいた。

水浸しになった階段を靴のまま上がって、ドアを開ければ、そこはあの牢獄だった。

「な、んで?」

わけが分からず一旦ドアを閉じる。

焦げ臭い臭いに洗面所の方を見れば、その辺り一帯は真っ黒に煤けていた。

もう一度自分の部屋のドアを開け、ゆっくりと中に足を踏み入れた。

暗い部屋は石の床。奥には天蓋付きベッド。

お香が焚かれているのか、薄く煙が漂い、不思議な香りが充満している。

誘われるように足が勝手にベッドに向かう。

そこにあの仮面の男がいた。