昨日は薄暗く感じたけれど、今日は上の方にある窓から日が差し込んでいて明るい。

鉄格子の向こう側には同じような部屋がいくつも並んでいるらしかった。

その時、廊下の奥から誰かが歩いてくるのが見えた。

ギョッとなってあわてて部屋に戻った。

誰? お母さんじゃなかった。父でも弟の碧《あおい》でもない。

なんか変な仮面みたいなのを被った背の高い男性だった。

わたしはもう一度廊下を覗き見た。

やっぱりこっちに向かって歩いてくる。

靴音が段々と近づいてくる。

わたしは念のためにベッドの影に隠れた。

靴音はわたしのいる部屋の前で止まった。

変な仮面が部屋の中に入ってこようとしている。

仮面というより覆面だろうか。ビロードのような素材で頭からすっぽりと被っている。目と口の部分は開いていて、肩から下は何だか中世ヨーロッパ貴族みたいな格好をしている。

明らかにそんじょそこらにいるような人じゃない。

ハロウィンの仮装パーティーとか、何かのお芝居に出てる人かも。

天蓋の薄い幕を通して入り口を凝視していたら、その人と目が合ったような気がした。