仮面の人イコール春彦おじさん説が急速に現実味を帯びてくる。

でもそれなら、わたしのことが分からないのはおかしい。

ぐるぐると思考がループする。

やっぱりあれはただの幻覚だった。何度もそう思おうとしたのに、何故かあのリアルな体験が幻覚だったなんて思えない。

もしかしておじさんはバスティーユ牢獄に閉じ込められていて帰れなくなってるんじゃないだろうか。

おじさんもわたしに送ってくれたのと同じお香を使ったのだとしたら、有り得ないとは言えない。

「姉ちゃん、頭おかしくなったんじゃないの」

誰かに相談したくて、思い切って碧に話してみたら一笑に付された。

「じゃあ、あんたもこのお香使ってみてよ」

木箱の中でお香は数本が灰になっていた。木箱が燃えた形跡はないのに、どうしてお香だけが燃えたのか、これも不思議でしょうがない。

でもわたしの頭ではこの現象を科学的に証明するなんて到底無理な話だった。

理系に強い碧ならもしかして、と思ったけど、碧にも分からないらしい。

お香の残りは二本。碧を部屋に引っ張ってきてそのうちの一本に火を付けた。

しばらくして、呆然と突っ立っている碧の脇腹を肘でつついた。