それにこの仮面の人がテレビで見た人なら、もう300年以上前に死んでいるのだから、おじさんがいるのは未来ということになる。

仮面の人が振り返って机に何かを置いた。そこからゆらりと立ちのぼる煙。

お香だ!

しかも鳥の飾りがついたお香立てには見覚えがある。

よく見ようと近寄れば、おじさんからもらったお香と同じ匂いがした。

「このお香って何か不思議なことが起こったりしなかった?」

勢いよく尋ねたわたしに、仮面の人はぽつりと呟いた。

「……帰ったのか」

目の前にいるわたしがまるで見えていないように仮面の人は部屋の中を見回し、どさりとベッドに腰をおろした。

帰ったってわたしのこと?

まだここにいますけど?

「ちょっと、まだ話の途中なんだけど!」

目の前で手を振っても飛んでも跳ねても、仮面の人はそれ以上何も言わず、やがておもむろに仮面に手をかけた。

え、脱ぐの?

ちらりと鉄格子を振り返れば、その向こうに見張りが立っているのが見えた。

「人前で仮面を外したら処刑されちゃうんでしょ? いいの?」

やっぱり聞こえていないのか、そのまま仮面は外され、わたしの目の前に端正なお顔が現れた。

そりゃ隠されると見たいとは思うけど、まさかこんな展開は予想していなかった。

だってそこにあったのはおじさんにそっくりな顔……、ううん、春彦おじさんに間違いない。

「おじさん!」

叫んだと思ったのに、声は出なかった。