「なんで仮面被ってるの」

「国王に命じられたからだ」

「国王って誰?」

「なんと無礼な。国王を知らぬと言うのか」

「だってわたしの国は王国じゃないもの。王様なんていないし」

「異邦人か、どうリで変わった衣装だ」

わたしからしたらそっちの方が変だけどね!

仮面の男は最初こそわたしの手を掴んだりしてちょっと怖かったけど、話しているとそうでもなかった。

わたしのお腹が盛大に鳴ったのを聞いても笑わずに看守を呼びつけ、二人分の食事を頼んでくれた。

食事の時も仮面を外さなかったのには驚いたけど。

囚人なのに看守はまるで召使いのようだし、食事は豪華だし、これってやっぱり夢なのかな。

あのお香は違法ドラッグで、わたしは意識がトリップしちゃって、どこかで見た広告かなんかに影響されて変な幻を見ているんだろうか。

話しているうちに仮面の人が知り合いみたいに思えてくるし、夢なのに料理は美味しいし、わけが分からない。

やがて部屋が暗くなり始めた。日が暮れてきたんだ。お母さんたち、わたしがいなくなって心配しているかもしれない。

やっぱり何としても今すぐ帰らなくちゃ。でもどうやって?

この仮面の人は自分の部屋に見ず知らずの人間が突然現れたっていうのに、平然としてる。

もしかして何か知ってるんじゃない?