昨日の感じからするとそろそろお香が燃え尽きて、幻から醒めるはず。

わたしは延々と続く長い廊下に目を向け、そこに出口なんてないことを確かめた。

動き回るより、この部屋にいた方がましかも。

それにこの仮面の男が昨日テレビで見たなんとかドージェって人なら、いざとなったら仮面を取ってしまえばこの人は処刑されるんだ。

「わたしの部屋はやっぱりここだわ」

仮面はじっとわたしを見下ろしていたけれど、やがて牢に戻った。鉄格子は開いたままだ。

「好きにするといい」

部屋の中から聞こえてきた声に、わたしは大きく息を吸ってもう一度牢に足を踏み入れた。

幻はいつまで経っても醒めなかった。