刀身は焦げ茶色に変色していて、これでは魔物を斬るどころか、いつ壊れてもおかしくはない。
 これは先日、僕らが挑んだダンジョン──遺跡の最奥にて手に入れた剣だった。 
 しかし実際は売り払っても二束三文の代物。
 こんな剣を押し付けられても、どうしようもない。

「お前―、ギャロル君の慈悲に感謝しなよ?」
「おっ、なかなか似合うじゃねえか。ボロボロの雑用君にピッタリだ!」
「よかったね、雑用君。これで君も魔物と戦えるよ! プッ! クスクス……」

 ボロボロの剣を持つ僕を見て、パーティーメンバーがバカにするように笑っている。
 だけど今の僕は怒りの感情より、焦りの方が先立っていた。
「か、考え直してくれないか? せめて近くの街に辿りつくまでは……」
「くどい! これ以上、お前と話していたら虫唾が走る! さっさと俺たちの前からいなくなりやがれ!」
 打つ手なしか……。
 これ以上粘っていても、彼の怒りを増長させるだけだ。
 このままでは追放どころか、今ここで殺されてしまうかもしれない。
 だから僕はぐっと堪え、こう頭を下げた。
「……っ! わ、分かったよ。今までお世話になりました」
「ふんっ。ほーんと、世話してやったもんだ。俺たちに感謝しながら魔物に食われ──じゃなかった。達者にやるんだな! ガハハ!」
 僕は逃げるようにギャロルの前から走り去った。
 随分離れても、彼らの甲高い笑い声が耳にこびりついていた。