走り続けていると、女の子の声がどんどん大きくなっていく。もう少しで着きそうだ。
 それからほどなくして、僕たちは開けた場所に出た。
 そこには……。
「いた!」
 ゴブリンの群れがひとりの女の子を取り囲んでいたのだ。
 しかもその中には、一体だけ羽の生えた変なゴブリンがいる。
 そいつは女の子を嘲笑うかのように低空で滑空していた。
『あの一体だけ変なのはなんじゃ?』
「あれはフライゴブリン! ゴブリンの変異種だよ」
 魔物の中には普通の個体とは違う特徴を持って、生まれてくる者が稀にいる。
 フライゴブリンはゴブリンが羽の生えた魔物と交配し生まれた者と言われており、一般的なゴブリンよりも何倍も手強い。
 だけど今はそれに怯んでいる場合じゃない。
「すぐ助けるから! ベルは危ないから近くで待ってて」
『うむ』
 ベルは僕の右肩から飛び降り、近くの地面に着地した。