『誰かが助けを呼んでおるようじゃのお。まあしかし、今の妾たちは他人を助けているほど暇ではないし、その義理もない。無視してさっさと──』
「なに言ってるんだ！　早く助けにいかないと！」
　ベルが全てを言い終わる前に、僕は助けを呼ぶ声の方へ駆け出していた。
『しょ、正気か？　仮に助けたとして、なんになる。時間の無駄だ』
「損得の話じゃないよ。助けを呼ぶ人がいたら、すぐに駆けつける。それは冒険者──いや、人間として当たり前のことだ！」
『冒険者というのも意外と忙しいんじゃなあ』
　とベルは呆れるように溜め息を吐いた。
『じゃがしかし、こうして助けを呼んでいるということは、なにか不測の事態が起こったんじゃろう──たとえばゴブリンに遭遇したとかな。そう考えると、そなたの行動もあながち無駄ではないか……』
「なに、ぶつぶつ言ってるの！　舌噛むよ！」