「そうしてて」
 そう言って、僕はゴブリンの捜索を開始した。
 しかし三十分が経過したくらいだろうか……。
「いないね……」
 立ち止まり、その場でそう呟いた。
『ゴブリンどころか、魔物の一体すら見当たらないではないか』
「ここは元々魔物が少ない場所だって、受付嬢さんから聞いてたけど……まさかこんなに現れないなんて」
 困った。
 まあ魔物がうじゃうじゃいるようなところを、試験の場所に指定しないだろうし、至極当然の話かもしれない。
「取りあえず、もう少し探してみよう。ベルは寝てても大丈夫だから」
『なにを言う。八百年眠りっぱなしだったからのお。眠気などないわ』
 なんて会話を交わして、再びゴブリン捜索を開始しようとすると……。

「きゃああああ! 誰か──助けてください!」

 森に甲高い女性の声が響き渡った。
「今のは……?」
 その剣呑な雰囲気に身構える。