そこには僕の三倍くらいの大きさになる硬そうな巨岩が置かれていた。

「一次試験はこちらの岩に攻撃してもらうことになります」

 受付嬢さんが巨岩の前でそう告げる。
「それだけですか?」
「はい。どれくらいの実力か把握しておきたいですしね。剣でも魔法でも、好きな方法で構いません。巨岩に傷を少しでも付けられたら、合格となります」
 なるほど。
 巨岩にはたくさんの傷が付いている。今まで何人もの人たちがこの試験に挑戦したが、壊すまでには至ってない……ということか。
『地味な試験じゃのお……今のそなたなら、これくらい楽勝じゃろうし』
 とベルは欠伸(あくび)をした。
 しかし他の人はそう思わなかったみたいで……。

「ははは! あのひょろひょろの男が挑戦するのか? 見るからに弱そうだ!」
「あんなヤツが岩に傷を付けられるはずがない。オレでもあれにちっちゃな傷しか付けられなかったんだからな」