「ダメだよ、ベル。まずはすることがあるから」
『にゃ、にゃんじゃと!? 観光や美味しいものを食べること以上に、大事なことがあるのか!?』
 非難の声をあげるベル。
 せっかく八百年の眠りから覚めたんだから、楽しみたいと思うのは無理もないことだろう。
 こんなウキウキ気分のベルを見ていたら、僕だってそうしてあげたい。
 でも……。
「……お金がないんだ」
『お金? 確かそれは、人間共の間で流通しているものじゃったか? なんでも、なにかを買う時に必要になってくると聞いたことがあるような気がする』
「よく知っているね。その通りだ。今の僕の状況については、ベルにも説明したでしょ?」
 道中があまりにも平和な道のりだったから、僕がSSSランク冒険者パーティーにいたこと──そして追放されてしまったことは、事前にベルに伝えていた。