それから何日か歩き、僕たちはようやくミースネに辿りついた。

『おお！　ここが人間の住む街か！』

　活気ある街並みを見て、ベルが瞳を輝かせる。
　喋っているのが聞こえたら騒ぎになるかもしれないけれど……幸い、周囲の雑音の方が大きいため、今のところは心配なさそうだ。
「ベルはこういう街に来るのは初めてなの？」
　右肩に乗っているベルに、僕はそう問いかける。
『うむ……なんせ、目覚める前が八百年前じゃったからな。記憶も曖昧じゃが……当時はここまで人が多くなかった気がする』
　興奮しているのか、跳ねた声のベル。
「まあ、少なくとも──僕が生まれてから大きな戦争や飢饉はないからね。八百年前に比べたら、全体的な人口も増えていると思う」
　その他にも農作業や医療技術、魔法体系の進歩といったことが理由で、人々の寿命は年々延びていっている。
　だからベルが驚くのも無理はないかもしれない。
『そうなのじゃな！　よし、これから街中を観光じゃ！　妾は美味しいものを食べたいぞ』
　ベルがふんっと鼻息をする。