『そう慌てるな。ふたりとも無事じゃ。シンディーの力によって、一瞬で完治したことを忘れたのか?』
「そ、そういえばそうだったね。でも僕は……」
『まあそなたの場合は特殊じゃったしな。疲労もあったんじゃろう。全く……この三日間、シンディーとカトリナはそなたを甲斐甲斐しく看病しておったのじゃぞ? そのことも覚えておらぬとは、相変わらず女泣かせじゃ』
 と呆れたように溜め息を吐くベル。
 とにかく……万事上手くいったということかな?
 今すぐふたりの元に向かいたいけれど……どうしても気になることがあって、素直に喜ぶことは出来なかった。
「ねえ、ベル」
『うむ。分かっておる』
 ベルは落ち着き払った声でこう続ける。
『魔神について……じゃな』
「うん。あの魔剣の精神世界でベルが語ったことは本当なの? 魔神は全人類の負の感情から生まれたって」
 問いかけると、ベルは神妙な面持ちで頷いた。