追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

 たったひとり、聖女の生き残りが村から逃げ延びていたのである。
 それがシンディーである。
 シンディーの両親は彼女だけを村から逃した。これは彼女がまだ五歳の頃である。
 そしてシンディーはミースネの親戚に預けられ、そこではひとりの平凡な少女として暮らしてきた。
 小さい頃の記憶が全くなかったわけではない。
 しかしシンディーの両親がベルフォット教に殺された時、その断末魔が彼女の心を壊した。
 ゆえに今まで記憶に鍵をかけ、無意識下で思い出さないようにしていたのだ。
 シンディーを育てた親戚の夫婦も、これを好都合だと考えた。
 彼女が聖女一族の生き残りだと知られれば、ベルフォット教がなにをしてくるか分からない。
 だから親戚夫婦もシンディーに真実を伝えていなかった──。


 そして今。

『思い出せ、聖女シンディーよ! 八百年前、そなたの一族が妾になにをしたのか思い出すのだ!』