追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

 骨が軋む音が聞こえる。おそらく、無理な動きをしてしまったため関節が外れたのかもしれない。
 しかしそんな人体の動きなど無視して、魔剣を握る僕の両手は、カトリナを殺そうと震えていた。
「フィ、フィルさん!? どうしたんですか? なんでカトリナさんに剣を?」
「あ、あなたどうしたの!? 話は後! まずはこの剣をどけなさい」
「……ふたりに最後、言っておきたいことがある」
 意志の力で強引に腕を動かし、カトリナの首元から魔剣を離した。
 そして剣先を自分の胸に向け──。

「ありがとう」

 グサアアッ!
 魔剣を己が胸に突き立て、僕は自害を図ったのだ(・・・・・・・・)
「「フィル──」」
 ふたりの僕の名を呼ぶ声が、やけに遠く聞こえた。

 ──そう、これは覚悟していたことだ。

 魔剣に体を委ね、僕はその力を完全に引き出すことに成功した。