追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

「バ、バカな……剣を振るうというのは初動が必要になってくる。それが全く見えなかった……だと?」
 この状態になって分かったことがある。
 魔剣にとって、人を斬り殺すというのは息を吸うのと同等の意味を持った。
 なにも考えなくても、敵が目の前にいれば斬る──いや斬っている(・・・・・)。
 たかが魔神の右腕しか取り込んでいないリオネルでは、僕の動きを見切れないのは無理もなかった。
「くっっっっっ!」
 リオネルがすぐに後退し、僕から距離を取る。
「だから遅えって」
 しかし僕は追撃の手を緩めない。
 百……千……万……億。
 無限に限りなく近い斬撃の数。
 彼は為す術なく、その体を魔剣に刻まれていった。
「があああああああ!」
 リオネルが黒い血を撒き散らしながら、天にも届きそうな叫び声をあげる。
「これでも死なねえとは……なかなか頑丈だな」
 しかしそれも時間の問題だ。