追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

「それでも──戻らなくちゃいけない。みんなを……守らないといけないんだ。だからベル、僕に力を貸して」
「…………」
 懇願する僕を、大人版ベルは慈しむような目で見る。
「……そなたは妾をなんだと思っている?」
「え?」
 どうしていきなり、そんな質問をするんだろう……。
「ベルは魔神だろ? 今更、それを疑う気はないさ」
「そう、妾は魔神じゃ」
 大人版ベルはこう続ける。 
「妾はそこまでこの世界を欲しておらぬ。しかし──妾の内なる心がこう語りかけるのだ。人間を殺せ! 世界をこの手に収めよ! ……と」
 でもベルはそうせずに、僕に力を貸してくれている。
 人間の街を興味深そうに眺め、美味しいものに舌鼓を打つ。とても世界を滅ぼす魔神とは思えなかった。
 しかし一方で、魔剣からは禍々しい気を感じ取った。
 邪竜の時も、僕はその邪念に囚われ、普段では絶対に言わないことまで口から出た。
 だから。