追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

 リオネルからは絶対強者の余裕すら感じた。
 僕はすぐさま斬りかかりたいけれど──隙がなさすぎる。少しでも動けば、死ぬのは僕の方だろう。
 これは集中力が極限にまで高まっているせいか、それとも恐怖からなのか──頬を伝って汗が滴り落ちた。
 魔剣を握る手が震えている。こんなのは初めてだ。
「そして持ち去った魔神の右腕を私は喰らった。しかし右腕だけとはいえ、魔神の力は強大だった。そのせいで随分長い間、眠りこけてしまったけどね。目覚めたのはおよそ三十年前だ」
「そこからベルフォット教を作った。さらにミースネの冒険者ギルドに潜り込み、ギルドマスターにまで成り上がった……ってことなのね」
 カトリナの言葉に、リオネルはゆっくりと首を縦に振った。
「私は誰にも負けない力を得た。しかし──まだ足りぬ。これでは世界征服は不可能だ。だから──」
 リオネルが僕を指差す。

「その魔剣を早く渡せ」