『そもそも妾はどうして世界征服など考えていたのじゃ? よくよく考えれば、そんなことはくだらぬ。人間を殺したいともそこまで思わぬし……妾はさっきはなにを……』
 と魔神はぶつぶつ呟く。
 あれ? 魔神も自分がなにをしたいのか分かっていないのかな?
 困惑している僕の一方、魔神は結論が出たのか──はっきりとこう告げる。
『よし、決めた! 妾はそなたと一緒に世界中を旅する! そっちの方が楽しそうじゃし、妾の性分に合う』
「決まりだね!」
 パチンと指を鳴らす。
 ……なんか自分、詐欺師みたいだなってちょっと思ったけれど──嘘はなにひとつ吐いていない。
 ギャロルのパーティーに入ってから色々あったけれど、それでも冒険者というのはこの世界で一番楽しい生き方だと僕は思っている。その楽しさを魔神にも味わって欲しかった。
 それに──こいつの話が本当なら──魔神は八百年も退屈な時間を過ごしていたのだ。