追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

 彼女は椅子の背もたれに体を預け、ぐたーっと脱力している。
 顎が少し上がっていて、口もだらしなく緩んでいた。
『フィルはなかなかテクニシャンだな。なんなら妾の頭も撫でてくれていいのだぞ?』
「ベルはまた後でね。シンディーを撫ですぎて、右手が疲れちゃったや」
『解せぬ』
 あら、今度はベルが不機嫌そうにそっぽを向いた。
 なにがなんだか分からないけれど……楽しい夜だ。
 こういうのがいつまでも続けばいい──この時の僕はそう思っていた。

《カトリナ》

「これで全員かしら?」
 カトリナは部下の聖騎士にそう問いかける。

 ──彼女の前には、縄でぐるぐる巻きにされた人間が何人も座らされていた。

 拘束されている者は全員、緋色のローブを着ている。
 彼ら・彼女らは悔しそうな表情を浮かべるものの、打つ手なしと諦めているのか──抵抗してくる様子はなかった。