追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

「無理もないわ。この八百年で人々の記憶は薄れ、残されている記録も徐々に失われていったから。いくらか脚色されている部分もあると思う。でも──確かに魔神はいた。それによって、世界が破滅一歩寸前までいったこともね。実際、それを裏付ける証拠もたくさん残ってるから」
 今までどこか半信半疑の僕がいた。
 魔神の話は全部ベルの出鱈目で、魔剣もただのすごい剣なんだって。
 いや──僕はそう信じたかったのかもしれない。
 しかしカトリナさんの話を聞いて、魔神のことを信じざるを得なかった。
『…………』
 彼女が話している最中、隣にいるベルは一言も喋らず猫のフリをしている。
 これは僕が「喋らないで」と言っただけが、原因じゃないと思った。
 ベルは言った。
 記憶が欠落している──と。
 魔神はたくさんの人間を殺した。
 その記憶もないということだろうか?