追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

「……御(お)伽(とぎ)噺(ばなし)で聞いたことがある。八百年前、この世界は魔神によって滅ぼされそうになっていたって」
『よく知っておるではないか』
 それを聞いて、黒猫の機嫌が上向きになる。
『それ以外はなんと聞いておる?』
「え、えーっと……あまり詳しくは知らないよ。それに御伽噺の中だから、脚色もされているだろうし……」
 僕も小さい頃、お母さんによく聞かせてもらった。
 悪いことをしたら魔神が復活して、食べられちゃうよ……って。
 でもそのレベルのお話だし、僕も十六歳になったから本気で魔神の存在なんか信じちゃいない。
 ──というようなことを黒猫に伝えた。
 すると黒猫が考え込む素振りを見せて、
『うむ……やはりか。そなたの反応を見て大体察していたが、八百年という長い年月は、人々から魔神の記憶を薄れさせてしまったか。嘆かわしいことじゃ』
 と呟いた。