「ええ。だって詳細もほとんど書かれてないじゃない」
 その依頼票にはこう書かれてあった。

『悪者から善良な市民を助ける。詳しくは依頼を受注した後、ミースネの冒険者ギルドより話す』

 これじゃあ、なんなのかさっぱり分からない。
 しかし。
「確かに……少し気にかかるが、こういう依頼はそこまで珍しくないだろう? ミースネのギルドにも都合があんじゃねえのか」
 実際、こういった誰にでも閲覧可能な依頼票に詳細を書きたくない……というギルドもいる。
「そりゃそうだけど……『SSSランク冒険者がひとり必須』っていう条件も気になるわ」
「だから報酬金が高いんだろう。詳しくは依頼を受けてから、ミースネのギルドに聞いてみたらいい」
「……まあそりゃそうね。ごめん。変なこと言って」
「気にすんな」
 いつもなら殴り飛ばしているところだが、今のギャロルは機嫌がよかった。
(こんな美味しい依頼……逃すわけにはいかねえ。誰にも渡すものか)
 ニヤリと口角を吊り上げるギャロル。
「そうと分かれば、受付にこの依頼を受注するって伝えよう。ミースネなんて田舎に行くのは嫌だが、仕方ねえ」
 そのギャロルの提案に、反対意見を述べる者は誰ひとりいなかった。