またあの時の邪念に囚われ──たとえば、大切な人に手をかけてしまいそうになったら──僕は自分の胸に剣を突き立て、命を断つ。
 そういう覚悟をもって、僕はベルに答えた。
「…………」
『…………』
 気まずい沈黙が流れる。
 邪竜と戦うまで、ベルやシンディーと楽しくお喋りしていたのが嘘のようだ。
 そしてやがて。

『……フィルよ。妾を恨んでおるか?』

 とベルが静寂を破った。
「どういう意味?」
『こんな魔剣、持っていなければ悩むこともなかった。魔剣の所有者になりたくなかった。そう考えておるものだと思ってな』
「なにを言っているんだ──そんなこと考えてないよ」
 ベルの問いに、僕は即答する。
 そもそもこの魔剣がなければ、オークキングに殺されていた。
 邪竜からシンディーも守ることが出来なかった。
 それにこの魔剣──ボロボロの剣は元々ギャロルの手元にあったものである。