『うむ。最初は目覚めたばかりじゃから、記憶が混濁しているものと思っていた。朝目覚めて、すぐに頭が働かぬようにな。しかし──今回のことで確信した。これは頭が働かないせいではない。記憶がなくなっているのじゃ』
「それじゃあなに? 僕の頭にあった邪念もよく分からないってこと?」
 ベルの煮え切らない返答に、さすがの僕も苛立ちを感じてしまう。
 しかしベルは真っ直ぐと僕を見て、
『その通りじゃ』
 とはっきり断定した。
『じゃが──同時にこう思う。あの邪念は魔神に最初から備わっていたものじゃと』
「どういうこと?」
『妾がそなたに最初に言ったことを覚えておるか? 妾はそなたに世界征服を唆したのじゃ。あの時はそれこそが妾の使命だと思っていた。まあしかし、そなたに説得されてすぐに考えをあらためたのじゃがな』
 ベルは続ける。