『はっきり言おう。妾もよく分からぬのじゃ……そなたが邪竜に踏み潰されようとした時、あの精神世界にいた』
「ベルもそうだったの?」
『そうじゃ。あの時の妾はおかしかった。壊したい──殺したい──そういう気持ちが頭の中に溢れていたと思う。今となっては、そなたにああいうことを言ったのが不思議じゃ』
 確かに、あの時のベルもいつもと様子が違っていた。

『ならば蹂躙せよ。圧倒的な力によって弱者を殺せ。さすればそなたの望むものは全て手に入るじゃろう』

 あの時、大人版ベルが僕に告げた言葉がやけに頭にこびりついている。
 まるでベルも僕と同じように、邪念に囚われているかのようであった。
『そして──今回のことでひとつ分かったことがある』
 混乱している僕に対して、ベルはこう続ける。
『どうやら妾の記憶は一部分が欠落しているようなのじゃ』
「欠落……?」