邪竜の一件があってから、ベルはなにかを考え込んでいるようで一言も喋らない。
　あれほどお喋りな猫だったのに……だ。
　ベルも喋りたくない気分なのかもしれない。
　でも──僕は魔剣の所有者として、ベルに聞かなければならないことがある。
　そう思い、僕は宿屋への道を急ぐのであった。


　宿屋に着きシンディーと別れると、僕はすぐにベルと自室に入った。
　今度はちゃんと鍵をかけたことも確認し、ベッドに腰かけてベルに問いかける。
「じゃあベル、聞かせてもらうよ。邪竜と戦った時のあれはなんなの？　魔剣の精神世界って？」
　ベルは近くのテーブルの上でお座りの態勢で、僕を見つめていた。
　また、だんまりを決め込まれると思った。
　しかしベルはようやく喋る気になったのか、
『さて……なにから喋ればいいのやら。そうじゃな、まずはあの時──そなたと妾に(・・)取り憑いていた邪念のことからか』