「フィ、フィルさんはすごいですね！　まさか邪竜を倒すだなんて！　それに剣が炎を纏っていたように見えましたが、あれは魔法ですか？　ちょっと見たことがない種類の炎でしたけど……」
　後ろからシンディーが追いかけて、元気に話しかけてくれる。
　きっとこの雰囲気を変えてくれようとしているんだろう。
　今はただ彼女の優しさが有り難かった。
　しかし。
「……ごめん、シンディー。今はちょっと喋りたくない気分なんだ。また明日でもいいかな？」
「あっ、はい！　フィルさんもお疲れですもんねっ。わたしのことはどうかお気遣いなく」
「本当にごめん」
「いやいや！　謝る必要なんてありませんから！　わたし、フィルさんがいなかったら、今頃死んでますし！」
　とシンディーが僕を元気付けるように、明るい声で言った。
　彼女には悪いけれど、今すぐにでもしないといけないことがある。
『…………』