追放冒険者の魔剣無双~ボロボロの剣は最強の魔剣でした~

 邪竜が紫の瞳を彼女に向けた刹那──僕は地面を蹴って、彼女のもとへ助けに入る。
 そしてシンディーを抱え、地面を転がりながらその場から退避した。
「うっ……」
 後ろを振り向くと、そこに広がっていた光景に言葉を失ってしまう。
 シンディーがさっきまでいた場所に、闇が形成されている。
 地面を黒く染め上げ、その場に生えている雑草や花が消滅した。

 危なかった──。

 少しでも助けにいくのが遅れれば、あのままシンディーはベルフォット教の男たちのように消えてしまっていただろう。
 しかし安堵している暇はなく。
「……っ!」
 体勢を崩した僕たちに、邪竜の足裏が迫ってくる。
 このまま踏み潰そうとしているのだ。

 早くこの場から逃げないと……っ! 

 いや──これは間に合わない!?
 死の直前、邪竜の動きがやけにゆっくり見えた──。

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