彼らはなんとか逃げようと、考えを練っている様子だった。
 それを見逃さず、僕は彼らに近付き剣先を突きつけた。
「さあ、これから街に戻りましょう。こんな魔物のいる森で放置なんて真似はしないから、大丈夫ですよ。一緒に帰り──そしてあなたたちの身柄を自警団に引き渡します。そこでゆっくり話を聞きましょう」
 と僕は声を投げかけるが、男たちは悔しそうにするばかりで返事をしようとしなかった。

「キャーッ! フィルさん、カッコいいです! さすがです!」
『これくらいフィルなら朝飯前じゃ。こんな雑魚共に手こずるような男ではない』

 近くでシンディー──そして戦いが始まる直前、僕の肩から離れていたベルがそう声をあげる。
 誰がどう見ても、僕たちの勝利だ。男たちにもう出来ることはない。
 しかし彼らはそう思わなかったのか……。